ステレオの産業史|エロイカ & ウエスギ
天才ラジオ少年の上杉佳郎氏が辿り、
行き着いた天命の系譜。
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EROICA & UESUGI エロイカ電子工業株式会社 / 上杉研究所

 エロイカ ALMIGHTY-55
1965(昭和40年)
エロイカ オールマイティ55 管球式インテグレーテッドアンプ  ¥59,000
アンプメーカーの御三家(パイオニア・サンスイ・トリオ)が勃興するなかで、
彗星の如く登場したエロイカ・アンプ。

 エロイカなる名を冠したアンプの広告を初めて目にしたのは、創刊して間もない「ステレオサウンド」誌である。その新進メーカー、エロイカで、常務取締役技術部長の役職を与えられ、アンプの設計に当たったのが、大学の卒業を控えた若き日の上杉佳郎氏であった。それにしても、一連のエロイカ・アンプの設計者が、後にオーディオ解説者となった上杉氏本人であることを知ったのは、ずっと後年のことである。
 このオールマイティ55は、下記のフェニックス70と共にエロイカ・アンプの第一弾モデルである。当時、玄人筋にウケの良かったラックスの3極管のプリメインアンプ「SQ38D」(¥54,500)の10W×2と比べて出力は倍以上。出力トランスには世評の高いのタムラ三次巻線型を使うなど、球のアンプとしては、正統且つ贅沢な作りであった。
実効出力:27W+27W *外形寸法:W450×H172×D300mm 重量:14kg


エロイカ PHOENIX70
エロイカ PHOENIX701965(昭和40年)
 
エロイカ フェニックス70 管球式コントロールアンプ ¥65,000 管球式パワーアンプ ¥65,000
数少なかった国産セパレートアンプの中では、出色の出来。
 当時、国産アンプの主流といえば、レシーバーとプリメインアンプで、しかも市販品の大半は、球からトランジスタ
ーに移行していた。そうした意味で、トランジスターアンプは進化の結果であり、当然、球よりは特性がいい、という評論家やメーカーの触れ込みは、ユーザーに混乱と誤解を与えた。そうした過度的な状況の中で、「フェニックス70」のセパレートアンプは登場した。これが、内容のグレードの高さのわりには、マッキントッシュやマランツよりも、価格が3分の1ほども安かった。まあ当時は、為替が1ドル360円の時代であり、関税も高かったから無理もない。
 なお、創刊当初のステレオサウンド誌の試聴記で、テスターの3人(岡俊雄、瀬川冬樹、山中敬三)が、高く評価していたことも記憶に残る。なお、上記写真の出力管は、発売当時のものと異なります。
コントロールアンプ *外形寸法:W430×H1173×D230mm 
パワーアンプ *
出力:27W+27W 外形寸法:W370×H260×190mm 



上杉研究所 ET-3000
1967(昭和42年) 
エロイカ ET-3000 トランジスター・レシーバーアンプ  価格不明
エロイカ唯一のトランジスターアンプ。 レシーバーとしては、群を抜くハイパワーで付属回路も充実。
 エロイカアンプ唯一のトランジスター・レシーバーである。当時の広告には、「数々の特許技術と厳選されたトランジスターを駆使して来るべきFMマルチ時代に応える・・・」云々とある。それを意識してか、アンプのネーミングが、「ステレオソース・プログラマー」とは、なんとも大袈裟で物々しい。それでも出力が50W+50Wと、レシーバーアンプの中ではトップクラス。また、プリとメインの単独使用が出来る他、3D用の出力端子を備えるなど、発展の余地を残した構成は、マニアの趣向に応えたものであった。
 その後、トランジスター・パワーアンプ「ET-2000」を登場させたが、注目されないままに、上杉佳郎氏はエロイカを辞し、やがて同社は幕引きを迎えた。

UESUGI UTY-1
1973(昭和48年) 
上杉研究所 UTY-1
 管球式ノラルパワーアンプ ¥400,000×2
同研究所の第1号モデル。出力管に845を使いシングル動作で出力は18W。
 上杉アンプの流儀、いわゆる理念は、回路技術だけではなく徹底して良い素材を使う、ということであったようだ。そして、自らの名を冠した上杉研究所をこの年に立ち上げた。そこに至るには、エロイカ時代の反省と、そこで得た智恵があったのであろう。その意味で、この一号モデルは、氏の理念が端的に示されたものである。とはいっても、ステレオペアでマッキントッシュの「MC-23000」(¥765,000)を超える価格とあっては、評価も慎重にならざるを得ない。もちろん、両者の使用目的は異なるわけだが・・・。
実行出力:18W 外形寸法:W400×H260×D360mm 重力:25kg


上杉研究所 U-BROS-1
1975(昭和50年) 
上杉研究所 U-BROS-1 管球式コントロールアンプ(独立電源部付属) 発売当初の価格¥330,000
個人的な見解として、プリは球よりも進化したトランジスターの方が優れる、と考える。
でも、これでなくては、という人を多いのでしょう。

 国産プリとしては、テクニクスの「SU-10000」(¥450,000)に継ぐ高価格モデルである。また、現物を目の前にするとその大きさに驚く。しかも、別電源である。コンストラクションにゆとりを持たせた、とはいえ、もっと手頃な大きさにまとめることが出来たのではないだろうか。それはそれとして、内部のワイヤリングは、見事のひと言に尽きる。
外形寸法:W532×H146×D360mm 重量:10.7kg

上杉研究所 U-BROS-3
1977(昭和52年) 
上杉研究所 U-BROS-3 管球式パワーアンプ 発売当初の価格¥380,000
銘管KT88の特色を無理なく見事にひき出した銘作。
 上杉研究所の発足から4年。トランジスターアンプの世界は急速な進化を見せた。 新たな半導体素子V-FETが登場し、さらには、PWM(パルス幅変調)、いわゆる電気効率に極めて優れたデジタルアンプが現実のものとなって、パワ
ーアンプのさらなる進化に弾みがついた。
 こうなると、電気ヒーター並の発熱と定期的なメンテナンスの不可欠な球のアンプの存在は、商業的にもさぞ難しいのでは、と思わせたが、さにあらず、少数ながらも正統な球派の支持を得て、「U-BROS-3」は、ロングランモデルとなった。これは、取りも直さず、音のよさと上杉ブランドの信頼性に裏付けられてのことなのであろう。
実効出力:50W+50W モノラル使用:90W 消費電力:260W 
外形寸法:W420×H200×D300mm 重量 23kg



音は人なり、上杉佳郎。
 主に「ステレオサウンド」誌のレギュラー解説者として、上杉佳郎という名前を知ったのは、同誌が創刊してから4年ほどが経った1970年頃のことだったと思う。また、その頃は、エロイカを辞した時期と符合する。それと、オーディオジャーナリズムの台頭期で、様々な稼業を本業とする個性的の解説者が多かった。もちろん、オーディオ解説だけで生活できる時代ではなかった。例えば長岡鉄男氏はコント作家、岡俊雄氏は「映画の友」の編集者で、洋楽レコードの解説や翻訳なども手掛けていた。菅野沖彦氏は朝日ソノラマの編集長、瀬川冬樹氏は「ラジオ技術」誌の編集員を経て、インダストリアル・デザインの道へと進み始めていた。このような顔ぶれの中で、上杉氏は、まだ20代半ばの最年少であった。ただ、そのように見えなかったのは、やや老けた顔立ちと、髪をきちんと七三に分けた、真面目そうな技術者の印象が、そのように感じさせたのかも知れない。
 さて、上杉氏が天才的ラジオ少年であったということは良く知られている。なんでも、3歳にして、回路図を理解できた、というから、まさに天才的だ。そこから、氏の系譜が始まった。いわば、天命を授かったようなものである。そのアンプづくりの才は、五味康祐氏にも福音をもたらした。その辺を、氏の文章から引用してみる。
 『上杉佳郎さんは、アンプを自作させれば、第一級の技術者である。私は、彼の作ってくれたパワーアンプを拙宅で使用して、その技術に満幅の信頼を寄せた。当時、使っていたマランツ8Bを上杉君の試作品に取り替え、その豊かなふくらみ、高忠実度性に驚嘆したのを覚えている』と。また、苦言も呈している。「マランツ8Bにまさるアンプをつくれる人でも、自室でいい音を聴いているは限らない」と。 これは、五味氏が上杉邸を訪問した時の印象だ。つまり、天は二物を与えず、ということなのである。
 その後の上杉氏は、球のアンプづくりを天命とした。そして、スピーカー道楽を楽しみ、マイウェイに徹した。それが、2011年の暮、69歳で逝った。まだまだ、やるべき多くのことを、積み残して旅立ったのではないだろうか。
 

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