ステレオの産業史|スタックス
コンデンサー型一筋に賭けたスタックス。
真実一路の道なれど・・・。
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STAX スタックス工業株式会社(現・スタックス有限会社)


スタックス CP-20AD/N
1952(昭和27年)
CP-20AD/N モノラル・コンデンサー・カートリッジ ¥4,000 *発信検波器と専用イコライザーが別途必要
LA-24F 専用トーンアーム ¥4,000
ソニーの先を行った超軽針圧コンデンサー・カートリーッジとトーンアーム。
 わが国でLPが発売されてまだ1年足らず。そのLPを再生するピックアップの針圧は、10〜20グラムが当たり前の時代である。それを昭和音光(スタックスの旧社名)は、超々軽針圧の1グラムという離れ業を成し遂げてしまった。
 これも、振動系を極めて軽量に設計できるコンデンサー(静電気)方式の賜物である。つまり、二つの金属を向かい合わせて、その一方の薄い金属板に針を取り付ける。それが振動すると静電気の容量が変化し、それを発信検波機で取り出す仕組みだ。この原理を考案したのは、スタックスではなくアメリカではあったが、同社がソニーよりも早く、これに着目し、わが国で初めて実用化したことは、オーディオ産業史に留めおくべきであろう。
 ただ、この超モダンなデザインは、アメリカ、ウェザース社の真似であった。今どきの中国が、模倣で製造大国にのし上がったように、戦後まもなくの貧しい日本は、スタックスに限らず、産業界が一様にそうであった。
ともかくも、昭和光音製として、第一回日本オーディオフェアに出展されたのである。

1963(昭和38年)
CPS-4(E) 
コンデンサー・カートリッジ ¥7,500(丸針) Eタイプ¥9,500(楕円針) *発信検波器が別途必要
本邦初。ステレオ用のコンデンサー・カートリッジ。
スタックス CPS-40 このカートリッジを有名にしたのは、原音再生の先達で「レコード芸術」と「ラジオ技術」で、新譜クラッシックの録音評を執筆していた高城重躬氏であろう。もちろん同氏の常用カートリッジが、これであった。とにかく、ムービングマスが少なく、トラッキングアビリティは抜群。それ故に、他のカートリッジでは望めない繊細感の表現力をも
っていた。但し、ジョイント部が三ピン構造のために、専用アームでないと使えない。さらには、発信検波器も必要で、これが普及を妨げる要因であり続けた。
*出力電圧:1,000mV(発信検波器使用時) *再生周波数帯域:20〜20,000Hz 
*最適針圧:0.6〜1.5g *自重:7.5g

スタックス SR-31968(昭和43年)
SR-3 コンデンサー・イヤースピーカー ¥7,200 
*専用アンプかアダプターが別途必要  

コンデンサー型ならでは繊細感は、壺中の天。

 スタックスが、 世界初のコンデンサー・ヘッドホン「SR-1」を発売したのは、8年前の1960年。 以来、スタックスはヘッドホンとはいわずに「イヤースピーカ」と名乗ってきた。
 それはともかく、ヘッドホンといえばスピーカーの代替品で、あまり重要視されることはなかった。しかも、イヤーキャップで耳を被う鬱陶しさと、ステレオの音場が脳天に広がる不快感はなんともしがたい。
 こうしたヘッドホンの弱点よりも、音の良さで高く評価されたのは、スタックスのヘッドホンが最初であったろう。当然、ハウリングや部屋の癖に左右されいなわけで、並み居るスピーカーをも凌駕した。
ただ、通常のアンプのヘッドホン端子に直接繋げないのが難点。専用アダプターか、専用アンプを必要とした。
再生周波数帯域:30〜25,000Hz、重量:420g

スタックス UA-71970(昭和45年)
UA-7 ユニバーサル・トーンアーム UA-7 ¥19,500 UA-70(ロングタイプ)¥21,500
実用針圧は1.5グラム以下。ワンポイントの支持構造で、軽針圧動作は天下一品。
 ’70年代を迎えるとイギリスのSMEを凌ぐユニバーサルアームが、わが国にも登場しだした。 とりわけ、このUA-7は、軽針圧アームの代表格であり、高感度な一点支持方式の弱点である左右バランスの不均衡を巧みに制動して、実用針圧1.5グラム以下を達成していた。全体のフォルムも見てのとおりに美しい。
 針圧調整は0.1グラムステップの直読式で精度が高く、梃子式のインサイドフォースキャンセラーも、SMEよりは簡便で動作は確実。別売のオプションアームで、同社のコンデンサー・カートリッジが使える配慮も見逃せなかった。

スタックス CP-X1970(昭和45年)
CP-X コンデンサー・カートリッジ(楕円針) ¥23,000 *発信検波器が別途必要
声楽や室内楽を好むパーフェクショニスト向き。
 前述のCPS-4と比べ、高域特性が 20,000Hzから30,000Hzに改善された。
その良さは確かにあって、声楽や室内楽の再生には、類例のない美音を聴かせる。ただし、万能型ではない。ダイナミックレンジの広いソースでは弱みとなる。
出力電圧:80mV(発信検波器使用時) 再生周波数帯域:20〜30,000Hz
最適針圧:1g 自重:9.5g

スタックス DA-300H 
1974(昭和49年)
DA-300H 純A級DCパワーアンプ  
¥570,000

純A級で150W×2。
超然たる孤高のパワーアンプ。

 純A級として、すでに評価を確立していたエクスクルーシブの「M4」を遥かに凌ぐハイパワー。しかも、国産アンプの価格としては飛び抜けて高価であった。
 このパワーメーターの感じを見て気付く人もいると思うが、これは、元ソニーに在職していたESシリーズのアンプ設計者の手になる。
 相棒のプリの登場は、5年後のことだが、ペアで1, 020, 000円の価格が、音の対価に等しいかは、未知数といったところであった。
最大出力:150×2 消費電力:700W(出力150W時) 外形寸法:W428×H358×D250mm 重量:36kg 


スタックス DMA-X1
1987(昭和62年)
DMA-X1 モノラルパワーアンプ ¥1,480,000(1台)×2
設計者には敬意を表しても、この巨大さは何ゆえのためか・・・。
 時代はバブルの絶頂期。街には「行け行けドンドン」の熱気に溢れていた。とはいえ、オーディオ産業は長らくの構造不況。それでも、レコード革命といわれたCDの登場が、業界に好況を呼び戻し、どうにか息を吹きかえしたのである。しかし、オーディオ専業各社の明暗は、さらに広がっていた。
 そんな時代、この巨大アンプがどのような意図で企画されたのか、正直なところ、まったくもって理解に苦しむ。大きさは、まるでサイドデスク並。重量は大人の平均体重を優に超えて90キロもある。用途も曖昧だ。業務用なのか、それとも、金に糸目をつけぬ粋狂なマニアのための逸品か・・・。
 たとえ、同社の低インピーダンス、低能率のコンデンサースピーカーをドライブするにしても、これほどのものが必要とは到底思えない。むしろ、勇みたつ設計者の矛盾を感じてしまうのである。なお本機は、、’87年のオーディオフェアに出展されてはいたが、ただ鎮座するのみで、スピーカーをドライブする光景には、お目にかかれなかった。
最大出力:300W(8Ω)、580W(4Ω)、1,030W(2Ω)、1,530W(1Ω) 消費電力:500VA(無信号時)
外形寸法:W280×H600×D660mm 重量:91kg
STAX SR-∑
1987(昭和62年)
SR-Σ PRO 
パノラミックサウンド方式
コンデンサー・イヤースピーカー ¥46,000

創業50周年モデル。常道の発想で生まれたイヤースピーカー、名付けてパノラミックサウンド。
 いわゆる、これまでのヘッドホンの振動膜は、耳孔と向き合っていた。それをスタックスのこのモデルは、耳殻の前方方向に設けたのである(写真の楕円部分)。
 人の耳は、周囲360°方向の音を感知することができるが、通常は、目の前にある発音体に対して、聴くという行為は集中する。人の話を聴く時に、そっぽを向いて聴く人は、まず、いないであろう。その発想である。
 その分、見ての通りのゴツい形になった。重さは500グラムと重い。コンデンサー型ならではの美音を聴かせはするが、やはり、フィット感がよろしくない。
 そのためか、卓上スピーカーとしても聴けますよ、というわけで、専用のスタンドが別売されていた。
再生周波数帯域:30〜35,000Hz 重量:500g 

スタックス SRM-T1SRM-T1 
コンデンサー・イヤースピーカー・ドライブアンプ ¥80,000

真空管による専用ドライブアンプ。
 前述の巨大半導体アンプの出現をみた後で、『球の方が音がいいんですよ』といわれて、面食らったのは、他ならぬ、スタックスのカタログ読者であったろう。
 ともかく、この専用アンプがないと、上記のイヤースピーカーは聴けない。しかも合計の価格が12万6千円と高い。
ちなみに、ゼンハイザーやAKGのダイナミック型の方が、
ソースの選り好みがなく、オールラウンドな楽しみ方には向いている。しかも、価格は遥かに廉価だ。
使用真空管:6FQ7(USA) 最大出力:300Vrms 
消費電力:49W 外形寸法:W195×H193×D375mm 
重量:3.2kg


スタックス ELS-F81X/ELS-F83X/ELS-8XBB

1987(昭和62年)
フルレンジコンデンサー
スピーカーシステム

ELS-F81X ¥300,000(1台)

1989(昭和64年)
フルレンジ2ユニット
コンデンサー・スピーカーシステム

ELS-F83X ¥500,000(1台)
1990(昭和65年)
2ウェイ8ユニット
コンデンサー・スピーカーシステム

ELS-8XBB
¥850,000(1台)

動作原理は理想的であっても、一筋ならではいかぬコンデンサースピーカー。
 コンデンサー型のスピーカーシステムが世界で初めて製品化されたのは1955年。ご存知、英クォード社のESL(エレクトロ・スタティック・ラウドスピーカー)である。そして、9年後、東京オリンピックの年に、スタックスは始めてコンデンサースピーカーを世に送った。以来、30年近くにわたり、改良を重ねつつ生産し続けてきた。この良し悪しは別にして、わが国のオーディオ界では稀なことだ。ちなみに、この方式を貫いて、今も生産を続けているのは、クォードと、アメリカのマグネパン(同社のモデルはコンデンサー型を改良したダイナミック型といえる)の2社のみである。

コンデンサースピーカー動作図 コンデンサースピーカーの構造は右図の如くで、左右2枚の孔あき固定電極と振動膜で形成され、固定電極にオーディオ信号が加わると、静電現象によって振動膜が前後に引き合い、それが音となって放射される仕組みだ。
 構造上、厄介なのが、ピンと張った振動膜に高電圧の成極電圧を加え、さらにテンションを高めた状態にしておかなくてはならない、ということだろう。それ故に優れたピストンモーションが得られるわけだが・・・。
 ここに取り上げた3種のモデルは、CDが主流になった時期のモデルで、価格は上記の通りである。英クォードの改良モデル「ESL-63」や、米アクースタットの「Model 3」。それに、オールリボン型のフルレンジシステムで注目されたアポジーの価格を念頭に置いても、スタックスのシステムの割高感は否めない。

 それでも、その対価に等しい、満足度が得られればいいわけだが、それが適わない。共通して言えることは、オーケストラのダイナミックレンジについてゆけない。では、声楽や室内楽はどうか、ゾクッとする音を期待したが、いまいち及ばないのである。これは、マンションの試聴室における印象だが、同社製のCDプレーヤーの所為であったのかも知れない。但し、LP時代の旧モデルを祖師谷の本社試聴室で聴いたときも同じような印象であった。

■ELS-F81X

■ELS-F83X

■ELS-8XBB
使用ユニット:フルレンジ×1 再生周波数帯域:40〜21,000Hz インピーダンス:2Ω 
外形寸法:W450×H1,100×D275mm 重量:23kg

使用ユニット:フルレンジ×2 再生周波数帯域:35〜25,000Hz インピーダンス:2Ω 
外形寸法:480×H1,965×D350mm 重量:37kg
使用ユニット:ウーファー×4、フルレンジ×2、ツイター×2 クロスオーバー周波数:300Hz
再生周波数帯域:35~25,000Hz インピーダンス:4Ω
外形寸法:W770×H1,900×D86mm、スタンド部奥行:250mm 重量:60.7kg(バッテリー込み)


スタックス雑感
 どのくらい、昔のことだったか、甚だ心もとない記憶なのだが、録音技師だったというスタックスの創業者、林尚武氏が、週刊朝日の巻頭グラビアを飾ったことがある。多分、スタックスが世界初のコンデンサー型ヘッドホンを発売した1960年(昭和35)頃のことではなかったか。この年には、ソニーが世界初のトランジスターマイクロテレビを発売し、日本のエレクトロ技術が世界注視の只中にいた頃である。きっと『第二のソニーを目指す町の研究家・・・』などというタイトルが付けられて、紹介されていたのではなかろうか。

 スタックスの創業は、戦前の1938年(昭和13)、昭和光音工業としてスタートした。ソニーは、戦後の創業だから、スタックスは、この分野の先輩に当る。現に同社は、コンデンサー・マイクとコンデンサー・カートリッジで、ソニーに先鞭をつけた。ところがソニーは、わが国初との触れ込みで、創業者の井深大氏が陣頭指揮をとり、コンデンサー型ピックアップを大々的に発表したのである。これは、マネした電器ならぬ、マネしたソニーであった。
 やがて、ステレオレコードの時代を迎え、同社のコンデンサー・カートリッジにお墨付きを与えたのが、原音主義の先達、高城重躬氏である。もちろん同氏の常用カートリッジであった。氏は、リスニングルームに巨大なコンクリートホーンを設え、レコード音楽から、生そのまま、といわれる音を引き出した。このカスタムメードの装置は、当時のわが国で望み得る、最高のものとされていたのである。

 マーケティング戦略など、あまり重要視してこなかったスタックスが、手堅く支持層を広げられたのも、高城氏よるパブリシティ効果であったろう。但し企業としては、長らく特異な存在でありすぎた。ひたむきなコンデンサー方式への情熱はともかく、オーディオ不況が加速する中で、製品企画の平衡感覚を見失ってしまったようである。巨大なモノラルパワーアンプは、その最もたるものであったろう。そして、破綻に至った。

 なお、1996年(平成8)に発足した新生スタックスは、イヤースピーカーと専用アンプ等に特化したブランドで、現在は、中華人民共和国広東省の深圳市に拠点を置くEdifier Technology Co.Ltd の資本傘下にある。


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INDEX

1881〜1945
立体音の発見と
二つの源流

1946〜1957
日本の戦後復興と
Hi-Fiへの熱き試み

1958〜1965
幕を開けた
ステレオの時代

1966〜1970
開花する日本の
独創技術

1971〜1980
4チャンネル騒動と
成熟の頂きに立った
コンポーネント

1981〜1990
AV時代の到来と
CDの登場
INDEX

*国内ブランド
ACCUPHASE
AUDIO TECHNICACORAL
DENON
DIATONE
EROICA & UESUGI
FOSTEX
GRACE
LIVING AUDIO
Lo-D
LUXONKYO
PIONEER & EXCLUSIVESANSUI
SONY
STAXTECHNICS
TRIO & KENWOOD
VICTOR (JVC)YAMAHA

アンサンブルステレオと
セパレートステレオ


*海外ブランド 
ALTECAR
GOODMANSJBL
JORDAN WATTSMARANTZ
MclNTOSH
ORTOFON
SMETANNOY







 


















 

 

 











































































































































































































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*海外ブランド|ALTECARGOODMANSJBLJORDAN WATTSMARANTZMclNTOSH
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