ステレオの産業史|ソニー
我が道を歩んだソニーオーディオ。時には迷走も。

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SONY ソニー株式会社



 1965年(昭和40)、この時期のソニーは、「世界ブランド・ソニー」へと大きく脱皮していた。2年前には、ニューヨークの5番街に日本企業として初めてのショールームをオープン。そして、オールトランジスターの小型TV
は、売れに売れていた。そして1965年、ソニーはこれまで沈黙していたオーディオ・ビジネスに華々しく打って出たのである。それも、これまでの国産品の水準を上回る高級コンポーネントによる市場参入であった。
 その名も「ES」シリーズ。「ES
」とは「エクストリームリー・ハイ・スタンダード」。つまり「究極の標準」のイニシアルから付けられたもので、世界ブランドとなったソニーの自負が強く感じられた。
 とりわけ、第一弾として登場したインテグレーテッドアンプ「TA-1120」は、真空管アンプの時代にあって、オールシリコントランジスター、しかも国内最高価格(¥88,000)で登場し、この道の玄人筋を驚愕させたのである。

ソニー TA-1120A
1967(昭和42年)
TA-1120A インテグレーテッドアンプ ¥96,000
わが国のオーディオ界に一石を投じた高級プリメインアンプの先駆
 記念すべき「ES」シリーズ の初代モデル「TA-1120」の誕生から、1年半ほどを経て登場した改良モデル。価格は1万2千円アップして、国内プリメインアンプの最高価格。当時、玄人筋の受けが良く評価の高かったラックスの3極菅プリメイン「SQ38DS」(¥54,500)を価格で優に上回った。
 ともかく、ラックスの音とは対極にあり、ベールを取り去ったような分解能の高さは、シリコントランジスターによる物理特性の優秀さを雄弁に示していたといえよう。さらに、つまみやスイッチ回りの操作感と、非の打ちどころのないパネルレイアウトなど、流石に国際級のレベルにあることを実感させた。
 ただ、この孤高であったこのプリメインにライバルが登場するのである。サンスイ「AU-777」(¥57,000)、ラックス「SQ-505」(¥58,000)。また当時、アンプの主流であったレシバーにも、ビクター「AST-140T」(¥59,800)といった優れた音質のモデルが相次いで登場し、トランジスターアンプの進化の早さみせつけたのである。
実行出力:60W×2(8Ω)消費電力:実行出力時260W、無信号時40W 外形寸法:W400×H145×D310mm 重量:11kg

1967(昭和42年)
TA-3120A / TA-4300 パワーアンプ¥52,000 クロスオーバー・ネットワーク¥41,000 
理想の音を追求する
マルチアンプ派の期待に応えた功績は大きい。ソニー TA-3120A
 プリメインアンプで、プリとメインを切り離し、単独で使用可能にしたのは、ラックスの「SQ38D」が最初であったと思うが、マルチアンプへの発展を前提に、独立したパワーアンプとクロスオーバー・ネットワークをシリーズで発売したのは、ソニーが最初であった。
 マルチアンプか、LCネットワークかは、議論の別れるところだが、メーカーの異なる優れたユニットを選び、理想の音を臨もうとする場合、マルチアンプは不可欠になる。例えば、相互ユニットの特性に合わせて最適なクロスオーバーを任意に選べること、また、インピーダンスに関係なくレベル合わせが自由に行なえることを考えると、そのメリットは大きい。
 しかし、その功罪をわきまえず、各社がこのブームに便乗していったのは問題であった。また、大半の市販スピーカーシステムに、マルチアンプ用の入力端子が付くようになったのもこの頃のことである。
ソニー TA-4300TA-3120A
定格出力:60W×2(8Ω)
消費電力:定格出力時250W、無信号時30W

外形寸法:W180×H145×D455mm 重量:8kg
T-A4300
クロスオーバー周波数:Low / 150Hz、250Hz、400Hz、600Hz 
 High / 3,000Hz、4,000Hz、5,000Hz、6,500Hz
消費電力:3W
 外形寸法:W294×H145×D163mm 


ソニー PS-2000
1966(昭和41年)
PS-2000 
ベルトドライブ(FCサーボ低速DCモーター)プレーヤーシステム ¥77,500
ソニーらしさに溢れた初代レコードプレーヤー。ユニットは単品でも発売。
 発売時の広告コピーに「カッティングマシンのランブルが気になります」とあった。その実物を目の前にしてソニーの自信のほどが窺えた。インサイドフォース・キャンセラー付きの凝りに凝ったトーンアームも然りである。
 ベルトドライブのモーター部は、低速回転のDCモータにFGサーボ(モータに直結させた発電機構で回転周波数を自動制御する)をかける方式で、おそらく世界初の試みであった思う。これまでのベルトドライブは、高速回転のモーターをプリーの口径比によって一定の回転数を得ていため、ベルトドライブといえどもモーターの振動をキャンセルすることは不可能であった。当然、広告コピーの「カッティングマシンのランブルが気になる・・・」と譬えられたように、SNはこれまでになく改善された。また標準装備のカートリッジには、当時、めきめきと評価を高めていた、サテンの高出力MCカートリッジがOEMとして採用されている。
カートリッジ:高出力MC型(VC-8A ¥13,000)
アーム:スタティックバランス型、インサイドフォースキャンセラー付き(PUA-237 ¥16,000) ロングタイプ(PUA-286 ¥18,000)
ターンテーブル:
アルミ合金30cm、重量1.5kg、ベルトドライブ、FCターボDCモーター(TTS-3000 ¥32,000)
外形寸法:W476×H175×D392mm  


ソニー SS-33001966(昭和41年)
SS-3300 密閉型3ウェイ3ユニット
スピーカーシステム ¥60,000(1台)
OEMユニットでアセンブリーされた
ソニー初のスピーカーシステム。
 半導体によるエレクトロニクスの分野では、世界に冠たるソニーも、ことスピーカーに関する技術の蓄積は十分ではなかった。当然、ソニー初のこのスピーカーシステムも「ES」シリーズの中にあっては、やや見劣りする内容であったのは、いたしかたのないことであろう。 OEMとして採用されたユニットは、格別目を惹くものではない。
 それでも「ES」シリーズのアンプとプレーヤーで鳴らしたときの相性は良く、音の肉付きで、やや不満を感じても、音の骨格の再現力はなかなかのものであったと記憶している。
 また、同社のデモンストレーション用として、38センチウーファーと、同型のスコーカーとツイーター各2本を並列に使用した豪華版の大型システム「SS-3800」(315,000円)が登場した。
使用ユニット:30cmウーファー、12cmコーンスコーカー
 5cmホーンツイーター
クロスオーバー周波数:500Hz、3,000Hz
外形寸法:W580×H800×D370mm
重量:37kg


1968(昭和43年)ソニー SS-2800
SS-2800 バスレフ型3ウェイ3ユニットスピーカーシステム
¥24,800(1台)

定評のユニットを使ってまとめあげたブックシェルフ。
 ご覧のユニットで自作のシステムを手掛けた人は多い筈。また、他のメーカー製システムにも、頻繁に使われたユニットである。なかでも、テクニクス「5HH17」を自社システムに使わないとヒットしない、というジンクスが、業界内で囁かれるほどであった。
 「P-610」はバックキャビティに収められ、無理のない広い帯域で使われている。その上限の6,000Hzに「5HH17」を受け持たせるというオーソドックスな手法で、耳あたりの良い、バランスのとれた音にまとめられていた。
使用ユニット:25cmウーファー、16cmコーンスコーカー(P-610)、
 5cmホーンツイーター(5HH17)
再生周波数帯域:
 
40〜20,000Hz 
クロスオーバー周波数: 600Hz、6,000Hz
外形寸法: W350×H590×D230mm 
重量:16kg 





ソニー ST-5000F
1969(昭和44年)
ST-5000F FM専用チューナー  ¥98,000
国産FMチュナーの水準を一気に押し上げ、長期にわたりリファレンスたる地位にあった名作。
 初代「ES」から2年、素子がシリコントランジスターからFETに代わり、アンプ系列のラインナップには、FETの「F」が付けられた。その中で最も注目され、しかも長期にわたり、FMチューナーのリファレンスたる地位にあったのが、初代の「ST-5000」(¥88,000)の後を受けて登場した「ST-5000F」である。
 当時、FMチューナーといえば、トリオ(現JVCケンウッド)の人気が他を大きく引き離していた。そのトリオの最高級チューナーですら6万円ほどであった時代に、「ST-5000F」は9万8千円。この価格だけでも業界と玄人筋を唸らせた。当然、これまでの国産FMチューナーの水準を一気に押し上げたのはいうまでもない。この開発の背景には、マランツの球の名作チューナー「#10B」(邦価¥380,000)を凌ぐものをつくる、という目標が熱くあったという。
チャンネルセパレーション:40dB以上(1,000Hz) 消費電力:20W 外形寸法:W400×H145×D310mm 重量:9.2kg 

ソニー TA-8650
1974(昭和49年)
TA-8650 インテグレーテッドアンプ ¥295,000
長らくの不振から脱して、高い評価に繋げた本邦初のV-FETアンプ。
 8年前、オールシリコン・トランジスターの高級プリメインアンプ「TA-1120」をもって、華々しくオーディー市場に参入し、センセーションを巻き起こしたソニー。それ以降、オーディオを専業とするメーカーの中には、半導体アンプを確実に進化させ、石のアンプは音が硬くて平面的、といった弱点を克服し、半導体アンプ本来の物理特性の良さを音の良さに繋げる設計手法をつくりあげていた。
 しかし、物理特性最優先を自負するソニーのアンプには、「音が冷たい」といった風聞が広がっていたのも事実。確かに、イギリス系のスピーカーとは相性は悪かった。それでも、ソニーのスピーカーをドライブする分には、音の分解能に優れ、録音のいいレコードには効果的であった。
 しかし、「音が冷たい」という風聞を、ソニーは気にしていたのであろう。特性が球に近いとされる「V-FET」を世界で初めて実用化し、V-FETアンプ・シリーズのトップモデルとなったのが、この「TA-8650」である。価格は、マランツの高級プリメイン「Model 1200B」(¥325,000)に次ぐもので、国産高級インテグレーテッドアンプの先駆となった。また、類型のない斬新なパネルデザインが秀逸である。
実行出力(20Hz〜20,000Hz両チャンネル駆動時):80W×2(8Ω)、90W✕2(4Ω) *消費電力:240W
外形寸法:W440×H170×D425mm 重量:20.8kg

ソニー SS-G7
1976(昭和51年)
SS-G7 バスレフ型3ウェイ3ユニットスピーカーシステム ¥128,000(1台)
ソニーのスピーカーに賭ける長年の執念が実った秀作。カラヤンもその音に聴き入ったとか・・・。
 これまで新しいシステムが登場するごとに、新素材、新技術の導入をはかってきたソニーブランドのスピーカーではあったが、正直なところ市場での評価と人気には、なかなか結びつかなかった。これを一番痛切に感じていたのは、もちろんソニー自身であった筈である。そこで、会長職に退いていたソニー創立者の井深大氏は、NHK総合研究所所長の工学博士・中島平太郎氏に白羽の矢を立てた。氏は三菱電機との共同開発で、局用モニター「2S-305」を完成させ、また,デジタル録音実験を世界で初めて成功させた先駆者である。
 ソニーの技術研究所所長に迎えられ中島氏は、音の入り口から出口まで、いわゆるオーディオ全般の製品開発の陣頭指揮を執ることになり、その新しいソニーの土壌で開発したのがこの「SS-G7」であった。コーン紙からツイーターのダイアフラムにいたるまで徹底した自社開発。また完成した試作モデルの比較試聴には、スタンウェイのグランドピアノも使われたといわれる。その甲斐あってか、発売されると全国の販売店から注文が殺到した。
 翌年、手兵ベルリン・フィルを率いて来日したカラヤン氏は、親交のある盛田会長の私邸に招かれ、この「SS-G7」の鳴らす「第九」の音にしばし聴き入り、『私のオーケストラは、こうしたスピーカーで聴いてもらいたい・・・』とつぶやいたそうである・・・。
 ただ、ちょっと気になることに触れれば、各ユニットの振動板位置を揃える構造をソニーでは、「プラム・イン・ライン方式」と呼んだが、これは、テクニクスが前年に発売してヒットしたリニア・フェイズ・システム「Technics 7」(¥90,000)を踏襲したもので、その後の新製品の流れをみても、ポリシーがころころと変わることであった。
 それはともかく、この10万円を越す大型システムが、1年と数ヶ月で20,000台の生産を達成したことは、大変なことである。なお、このモデルの上級システムにミッドバスを加えた4ウェイの「SS-G9」(¥288,000)があった。
使用ユニット:38cmウーファー、10cmコーンスコーカー、3.5cmドームツイーター 再生周波数帯域:30〜20,000Hz
クロスオーバー周波数:550Hz、4,500Hz 外形寸法:W510×H940×D445mm 重量:48kg


1977(昭和52年)
PS-X9 イコライザーアンプ内蔵/クォーツロック・ダイレクトドライブ・システムプレーヤー ¥380,000(アクリルカバー付き)
プレイバック・スタンダードのクオリティーに挑んだソニー仕様のシステムプレーヤー。
 「PS-X9」は、無共振化のための機械強度と、先端の電子工学を融合させることによって、プレイバック・スタンダートたるクォリティーを得るために開発された筈。当然、スタジオまたは、パーフェクショニストのためのシステムプレーヤーであって、コンポーネントの構成は、本機を中核にそえて選び出すのが望ましくロスも少ない。そうしたところは、あの「EMT#930st」(¥1,150,000)とも共通する。
 なお、本機に使用された、ロングアーム「PUA-7」(¥60,000)は、後に単品としても発売されたが、優秀なアームがひしめき合う中にあっては、やや魅力に欠けた。また、ある評論家は、「EMT以上の音のするプレーヤーを私は知らない」と明言して暗に「PS-X9」を否定。ニッポンの技術優越主義では解析できないミステリー神話が、当時のオーディオ界には確かにあり説得力もあった。
■プレーヤー部 *ターンテーブル:38cmアルミダイカスト、重量2.8kg 駆動方式:クリスタルロック・マグネディスクサーボ・ダイレクトドライブ トーンアーム:スタティックバランス型「PUA-7」 カートリッジ:MC型(XL-55Pro)、標準針圧:2g 
■イコライザーアンプ部 *出力:(1)パス、(2)RIAAイコライザー、(3)MCヘッドアップ+RIAAイコライザーの3点切替 
■総合 *
消費電力:45W 外形寸法(アクリルカバー含む):W540✕H220✕D450mm 重量:35kg 

ソニー TA-E88
1978(昭和53年)
TA-E88 DCプリアンプ  ¥200,000
理想のディスク再生を目指して登場したソニー久々の秀作プリアンプ。
 70年代に入ると、オーディオ各社の技術レベルの均質化と、これまでにない高級アンプの登場によって、アンプはソニーでなければならない、というかつての魅力が後退し、むしろ不調を囲っていたと思われる時期が長いこと続いた。そんな外野の憶測を払拭してみせたのが、このプリと下記のパワーアンプのシリーズである。
 プリの「TA-E88」は、当時、同社の最高位にランクされたもので、完全ツインモノ構造の全段DCアンプ構成。とりわけ、理想のディスク再生を目指しただけあって、イコライザーアンプとMC用のヘッドアンプ、それにフラットアンプだけの徹底したシンプル構造で、しかも信号経路は完全に左右対称となっていた。
消費電力:22W 外形寸法:W480×H80×D370mm *重量:9.4kg  

ソニー TA-N88
1978(昭和53年)
TA-N88 PWNパワーアンプ ¥180,000
増幅部と電源部をパルス化した世界でも初めてのハイパワーアンプ。
 パワーの変換効率の高さで、先行きが注目されていたパルス幅復調増幅をソニーが逸早く採り入れて注目された。つまり、入力信号を一旦、PWM(パルス幅変調)にデジタル化し、そのパルス信号で増幅素子を高速でオン・オフの動作をさせるもので、理論的には100%の電力効率が得られることになる。その結果、ハイパワーアンプは電力喰いの重量級といった従来の常識を「TA-N88」は、塗り替えてしまった。しかもヒートシンク無しである。
実行出力:160W×2(8Ω) 消費電力:135W 外形寸法:W480×H80×D360mm 重量:11kg  

ソニー TA-N86
1978(昭和53年)
TA-N86 DCパワーアンプ ¥90,000
Aクラス、Bクラス、モノラルハイパワー。この3通りの使い方ができる実用度の高さ。
 上記の「TA-N88」が増幅部と電源部をパルス化したのに対し、この「TA-N86」は、電源部のみをパルス化したモデルで、ここにもソニーの先端技術を随所に見ることができる。なかでも、用途に合わせてAクラスとBクラス、さらに、このコンパクトな筐体からモノ200Wのハイパワーが得られることである。
 また、同シーリーズとして内容を一新して登場したクロスオーバー・ネットワーク「TA-D88」(¥130,000)は、マルチアンプの正統派にとって、欠かすことのできない存在であった。
実行出力:Aクラス動作18×2(8Ω)、Bクラス動作80W×2(8Ω)、モノラル動作200W(8Ω)
消費電力:180W 外形寸法:W480×H80×D360mm 重量:8.0kg 


ソニー XL-55pro1978年(昭和53年)
XL-55pro シェル一体型MCカートリッジ ¥37,000
オリジナリティー重視の思想が貫かれたソニーのMC。
 上記のシステムプレーヤ「PS-X9」に使用されたもの。ソニーのカートリッジには、独自のカーボンクラッド(アルミとカーボンの複合材)をカンチレバーに使用したMM型とMC型が系列をなしていた。
 なかでもMC型は、鉄芯なしの構造で、独自の8の字巻き線法のコイルによる新しい発電方式を採り入れ、他社のMC型とは、一線を画していた。その単体のMC「XL-55」(¥30,000)をシェル一体としたのが、写真の「XL-55
pro」である。なお、トップランクのMCには、ダイヤモンドカンチレバーを使用した「XL-88D」(¥150,000)があった。ちなみに、これら一連のソニーカートリッジの開発に当たったのは、往年のグレース(品川無線)が、NHK技研との共同開発で放ったベストセラー・カートリッジ「F-8L」の開発者である。
出力電圧:0.2mV 周波数特性:10~50,000Hz 適正針圧:2.0g(1.5〜2.5g)
スタイラスチップ:0.3×0.8milソリッドダイヤ 自重:22g 

ソニー CDP-101
1982(昭和57年)
CDP-101 CDプレーヤー ¥168,000(リモコン付属)
世界初のCDプレーヤー。アメリカのベルリナーが発明した円盤式レコード以来の大革命。
 この年のオーディオフェアは、業界の不況をよそに、ソニーブースだけは異様な熱気に包まれていた。95年前、元ベル研究所の技術者エミール・ベルリナーが発明したレコード以来の大革命、手の平の大きさの光る円盤にデジタル符号が刻まれたCDのデモが初めて行なわれたのである。
 10月1日の発売を控えては、ソニー社長、大賀典夫氏自らが、定時のTVニュースに登場して、おもむろに背広のポケットからCDを取り出し、プレゼンテーターを演じた。初期ロットの本機とリリースされたCDは、わずか数日で完売。それが、また話題になったのである。
 CDはフィリップスがソニーに開発を持ちかけて共同開発が立ち上がった。勿論、それ以前にソニーはデジタル・オ
ーディオ・ディスクの開発に着手していたし、日本ビクターも水面下で独自におこなっていた。
 ソニーでCDの陣頭指揮に当たったのは、もちろんNHK技研からソニーに迎えられた中島平太郎氏。さらに、ヘルベルト・フォン・カラン氏の賛同も追い風になった。かくして、レコードと共存するであろうといわれたCDは、発売から5年で、レコードの売上げを抜き去ったのである。また、初期のCDプレーヤーの音質への不満も、今にして思えば驚くほど早く改善されて進歩した。
消費電力:23W 外形寸法:W350×H105×D325mm 重量:7.6kg 

ソニー PROFEEL KY-27HF11980年(昭和55年)
PROFEEL KY-27HF1 
27インチ・カラーモニター  ¥228,000

AV(Audio&Visual)時代の到来に先駆けて、
テレビに革新をもたらしたソニープロフィール。

 チューナーやスピーカーを搭載せず、モニター機能だけに徹した高画質とシンプル・イズ・ベストのデザインは、これまでのテレビの常識を、完全に覆す画期的なものであった。これに大きく刺激された松下電器(パナソニック)は、アルファーシリーズを投入して対抗。
 そして翌年には、パイオニアがレーザーディスクを市場に送り、テレビをAVの一部とするコンポーネント化の流れは急速に加速して定着したのである。




ソニー DVP-S7000
1997年(平成9年)
DVP-S7000 DVD / CD / VIDEO CDプレーヤー ¥110,000(リモコン付属)
ソニー初のDVDプレーヤー。平面ワイドブラウン管TVとのコンビで
ホームシアターの理想に一石を投じた。

 DVD開発の盟主、東芝の1号モデルから遅れること1年、満を持しての登場となった。それだけに、フロントパネルにフローディングメカを採り入れたデザインはソニーらしさに溢れる。肝心の画質と音質の良さを裏付けているのは、DVDとCDそれぞれに専用のピックアップと電源を使用しているからであろう。
また、独走体制にあった平面ワイドブラウン管TVとのコンビは、ホームシアターの理想に一石を投じた。
 ちなみに、この時期のソニーは、日本主要企業の100社中、ブランド価値ランキングで第一位。また、大学理系の人気企業ランキングでもトップの座にあった。
消費電力:28W 外形寸法:W430×H111×D3955mm 重量:7kg
 

ソニー雑感
 わが国で最も早くステレオとの関わりを持ったのは、東京通信工業(現ソニー)である。それは、創業者・井深大氏の稀なるスピリットイズムと大いなる好奇心の所為であろう。 昭和27年の暮、NHKがラジオの第一と第二放送の電波を使って行なったステレオ実験放送には、創立6年目の東通工がステレオ用に改造したテープレコーダーが使われた。また同年、井深氏の発案で日本オーディオ協会発足。初代の理事長を務めてステレオ普及の陣頭に立ったのである。
 翌年には、NHKの協力でステレオキャラバンのクルマを仕立て、テープ録音によるテステレオコンサートを日本各地で開催するなど極めて意欲的であった。その評判を聞き及んだ三笠宮と高松宮の両殿下は、東通工の試聴室を訪れ、N響の演奏や効果音の立体音を目の当たりにして、驚きと強い関心を示されたという。
ソニーのコンデンサーピックアップとフェアチャイルドのMCカートリッジ
 またこの時期、モノラルではあったが、米・フェアチャイルド社のMCカートリッジ(当時、最も評価が高かった)と、自社開発のコンデンサーピックアップとの公開試聴会は、後々までの語りぐさにな
った。ただ、どちらに軍配があがったかは不明。この興味深い実験を企画し、陣頭指揮にあたったのも井深氏であった。後にコンデンサーピックアップを使用した電蓄も発売している。
 ソニーは、このコンデンサーピックアップを、わが国初の開発としていたが、実際は、スタックスの方が3年ほど早かった。

 それから10年ものブランクの後、冒頭で記した「ES」シリーズの登場となるわけである。しかし、オーディオから身を引いていたわけではない。一時期、マランツやマッキントッシュ、オルトフォン、トーレンスなどといった、誰もが知る海外著名ブランドの輸入総代理店をしていた。だからといって、ソニーのコンポーネントが、その影響を受けたという形跡はない。やはりソニーはソニーイズムを貫いていた。

ソニーのデジタルプロセッサーPCM-1 一方、デジタル(PCM録音0の分野では、DENONに一歩、遅れをとったものの、1977年、世界初のコンシューマー用デジタルプロセッサー「PCM-1」を発売。これが単体で48万円、これに記録用のホームビデオが必要なため、合わせて66万円という高価なものになった。それでも、デジタル録音への関心は高く、初期ロットの100台は、すぐに予約を終了して完売。その中にはスティービー・ワンダーもいた。しかし、この完売の裏でクレーÚムが殺到したのである。
 ソニーはこの不名誉をデジタル技術を鍛え直す絶好の機会とした。いかにもソニーらしいエピソードだ。そして5年後、レコード革命のCDを登場させた。

 これらの時代を通して、かつてのソニーらしさが影を潜めた、と思うのは間違いである。急激な外部環境の変化とデジタル技術の成熟によって、ソニーがオーディオをやる時代は疾うに終わった、そう理解するのが妥当であろう。


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INDEX

1881〜1945
立体音の発見と
二つの源流

1946〜1957
日本の戦後復興と
Hi-Fiへの熱き試み

1958〜1965
幕を開けた
ステレオの時代

1966〜1970
開花する日本の
独創技術

1971〜1980
4チャンネル騒動と
成熟の頂きに立った
コンポーネント

1981〜1990
AV時代の到来と
CDの登場
INDEX

*国内ブランド
ACCUPHASE
AUDIO TECHNICACORAL
DENON
DIATONE
EROICA & UESUGI
FOSTEX
GRACE
LIVING AUDIO
Lo-D
LUXONKYO
PIONEER & EXCLUSIVESANSUI
SONYSTAXTECHNICS
TRIO & KENWOOD
VICTOR (JVC)YAMAHA

アンサンブルステレオと
セパレートステレオ


*海外ブランド 
ALTECAR
GOODMANSJBL
JORDAN WATTSMARANTZ
MclNTOSH
ORTOFON
SMETANNOY






 
















 

 

 


















































































































































































































































































































































































































































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*ステレオの産業史|TOP PAGE1881〜19451946〜19571958〜19651966〜19701971〜19801981〜1990
*国内ブランド|ACCUPHASEAUDIO TECHNICACORALDENON
DIATONEEROICA & UESUGIFOSTEXGRACELIVING AUDIOLO-D
LUXONKYOPIONEER & EXCLUSIVESANSUI
SONYSTAXTECHNICSTRIO & KENWOODVICTOR (JVC)YAMAHA
 |アンサンブルステレオとセパレートステレオ
*海外ブランド|ALTECARGOODMANSJBLJORDAN WATTSMARANTZMclNTOSH
ORTOFONSMETANNOY





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