ステレオの産業史|テクニクス #4
家電王国の底力が見事に開花
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TECHNICS 松下電器産業株式会社(現・パナソニック株式会社)
#1 / 1954〜1969 * #2 / 1971〜1977 * #3 / 1977〜1986 * #4 / 1988〜1992


テクニクス SB-MX2001988(昭和63年)
SB-MX200
 
バスレフ型 3ウェイ3ユニットスピーカーシステム(防磁仕様) 
¥250,000(1台)

平面ユニットのシステムラインナップを経て生まれた
オーソドックスな3ウェイ。とは言っても、
振動板への新たな試みが凄い。
 13年前、リニアフェイズという新機軸で、「Technics7」をヒットさせて以来、多くの名作モデルが生まれ、その路線を平面ユニットのシステムが受継いだ。ところが、それをあっさりと捨て去り、オーソドックスなシステムに回帰したのには、いささか驚いた。また、トールボーイスタイルなのは、ホームシアターの需要を配慮してのことであろう。
 そのカタログコピーには、耳慣れぬ言葉が並ぶ。「ピュアマイカ(純粋雲母)を漆でコーティング」これは、ウーファーとスコーカーである。「ピュアマイカにプラズマCDV法を用いてダイヤモンドをコーティング」これはツイーター、といった具合だ。ともあれ、これまでにない凄いユニットを搭載したシステムができたな、というのが実感であった。
SB-MX200のユニット
再生周波数帯域::25~45,000Hz 
クロスオーバー周波数:450Hz、4,000Hz
外形寸法:W320×H863×D415mm 
重量:43kg

テクニクス SB-AFP100
1988(昭和63年)
SB-AFP100
 バスレフ型 4ウェイ10ユニットスピーカーシステム 
¥1,500,000 受注生産品(1台、セッティング料別)

テクニクス史23年のモニュメント。この上級モデルはウィーン国立歌劇場に納入。(写真の人物は合成)
 世界でも類を見ない平板ユニットをアレイで使用した巨大システムである。また、平面ユニットの復活は、開発者の並々ならぬ意欲と創意、それに執念さえも感じさせた。
 低音用の振動板には、ピュアマイカならぬ発泡マイカを芯材に、なんと甲殻動物である蟹と海老の殻に含まれる天然高分子成分の素材でサンドイッチしたもの。ちなみに、この成分は、名器ストラディバリウスに塗られているニスの成分と同じであるという。さらには、日本伝統の技も生きている。それは、ウーファーユニット表面の色を特長づけている濃いブルー。これは、藍染に使われる染料で、褪色を防ぎ、振動板の経年劣化を効果的に抑える効果があるそうだ。スコーカーとツイターの振動板は、冒頭で紹介したシステムのドーム型を平面振動板にしたもの。
 まさに、テクニクス史23年のモニュメントたるシステムであることは確かだ。なお、ウィーン歌劇場に納入されたこの上級モデル「SB-AFP1000」(一台¥2,500,000)は、ユニットの数が倍の超巨大システムであった
使用ユニット:平面型ウーファー(30×80cm)×4、平面型ミッドバス(13×32cm)×2、
 平面型8cmスコーカー×2平面型2.7cmツイーター×2
再生周波数帯域 :35〜40,000Hz クロスオーバー周波数:180Hz、500Hz、3,000Hz
外形寸法:W1,120×H2,250×D940mm 重量:170kg

テクニクス SU-C5000
1990(平成2年)
SU-C5000
 コントロールアンプ ¥200,000(消費税別)
アナログとデジタル共存時代の最後を飾る多機能コントロールアンプ。
 8年前に登場したCDは、5年でレコードの年間売上げを追い抜き、オーディオソースの大半はデジタルになった。一方、パイオニアが開発のレーザーディスクが普及の歩を進め、オーディオは、映像メディアと一体の方向へ向かっていた。そこで言われだしたのが、コントロールアンプ不要論である。確かにデジタルソース限れば、イコライザー部は不要。良質のボリュームとセレクターを介して、パワーアンプに直結した方が音の鮮度は高い。そんな事情のなかで、テクニクス最後の多機能コントロールアンプとなったのが本機である。
 前作「SU-A200」のブラックパネルが、ゴールドパネルに変更されて一段と洗練された。フォノイコライザー部と出力段にテクニクスが標榜してきた「classAA」回路を搭載。他の機能と諸特性も万全である。
消費電力:15W 外形寸法:W484×H131×D360mm 重量:11kg

テクニクス SEA-5000
1990(平成2年)
SEA-5000 
パワーアンプ ¥300,000(消費税別)
比較的手頃な価格ながら、内容の充実度は価格を超える。デザインも簡潔で美しい。
 一時期のブラックパネル一辺倒から、このモデルでゴールドパネルに変わり、上記コントロールアンプと同様に一段と洗練された。テクニクスが標榜する「classAA」(理論的には純A級と同質)は、前作「SE-A100」で初めて採り入れられたもので、1980年代にスレッショルドを起業したTRアンプ設計の天才、ネルソン・パスが考案した「STASIS(ステイシス)回路」を範にしたと思われる
 これまで、ワンブロックで行われていた二つの動作、すなわち電圧コントロールと電流ドライブを個々に行い、これをLR独立させて動作させている。こうすることで、スピーカーの負荷インピーダンスの変動にも電流電圧の位相差が生じることがない。極めて安定した伝送増幅が可能になったのだ。電源部は定石どおりLRの完全独立構成。
それにしても、このハイグレードなパワーアンプが比較的手頃な30万という価格で作られたことは、他社にとって、さぞ脅威になったことであろう。
実行出力:240+240W(4Ω)、200+200W(6Ω) 消費電力:400W
外形寸法:W484×H207×D475mm 重量:30.4kg

テクニクス SST-1
1992(平成4年)SST-1 専用アンプ
SST-1 
バックロードホーン型 2ウェイ2ユニット スピーカーシステム 
¥78,500(消費税別1台、スタンド別売)
■専用パワードライブユニット / SST-40WT ¥23,000
バックロードホーンの利点を、大胆に製品化した英断に脱帽。
ニューヨーク近代美術館に永久収蔵。
 バックロードホーンシステムは、箱の製造工程が複雑で、当然コストが嵩む。それでも、古くは、JBL、コーラル、サンスイ、ビクターが製品化してきた。それが、市場から完全に姿を消して久しい。それだけに、このモデルの登場には驚かされた。しかも、理に適った度肝を抜くこのスタイルである。
 プラスチック製のボディーがこの形状を可能にしたわけだが、ボディー内部で音道を二つに分け、ユニットの直接放射と、ホーン開口部の放射との位相差・時間差を解消する巧妙な設計だ。
 また、専用のパワードライブユニットの特長は、ラウンドネス回路が設けられていることで、バックロードホーンの重低音不足をカバーするためのものだ。もちろん、通常のアンプでドライブしてもなんら問題ない。なお、余談であるが、これから「3Dプリンター」が本格的に普及してくると、この手のカスタムモデルが、手軽に自作できるようになるのは、ほぼ間違いないだろう。
使用ユニット:16cmウーファー、5cmホーンツイーター 再生周波数帯域:55〜20,000Hz クロスオーバー周波数:4,500Hz
外形寸法:W190×H650×D570mm 重量:12kg
専用パワードライブユニット
実行出力:20W×2 外形寸法:W75×H143×D183mm 重量:2.6kg


テクニクス雑感
 松下電器(創業時の名称=松下電気器具製作所)は言うまでもなく、経営の神様と言われ、戦後昭和の経済史に偉大な足跡を残した松下幸之助氏が、1918年(大正7)、24歳で起業したものである。その松下電器が、音響分野に踏み出した第一歩は、1931年(昭和6)、東京放送(現NHK)のラジオコンクールに出品したラジオが優勝したことであった。
 5年後には、国産第1号のラジオ付電蓄を発売。これに触れて音を聴いた近衛秀麿(元子爵でオーケスト指揮の草分け)は、『アメリカのRCA製のものだと言われれば、私は信用するだろう・・・』と、絶賛した逸話が残っている。
 松下電器にステレオ事業部が発足したのは、『もはや戦後ではない』と経済白書の冒頭で謳われた1961年(昭和36)のこと。その4年後にテクニクスブランドが誕生した。当初は、ステレオのご三家(パイオニア、サンスイ、トリオ)や資本傘下にあった日本ビクターの後を追うものであったのが、忽ちにして肩をならべ、質・量ともに、わが国のみならず、世界のオーディオ界を牽引すほどになった。それを支えてきたのが、日本初、世界初、といった新技術を次々と世に送り、強力なバックボーンにしてきたことであろう。
 一時期、戦後創業のベンチャー企業ソニーは、業界のモルモット、それを真似るマネシタ電気などと、揶揄されても仕方のないところは、家電分野で確かにあった。しかし、テクニクスで、そのような陰口は聞いたことがない。それどころか、どのジャンルのコンポーネントも内容で上回り、意匠面においても、ソニーには無いポリシーを築きあげてい
った。これは、技術者の創意とこだわり、それを支えるマネジメントセンスの両輪が、常に時代を先取りしつつ、実に上手く稼働した、ということであろう。そこには、マンモス企業でありながら、オーディオという、極めて個人的な趣味の面白さを見失うこのとない精神が、テクニクスのマンパワーに根付いていた、ということである。
そして、名門テクニクスは、2014年9月、新たな復活のスタートを切った。


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INDEX

1881〜1945
立体音の発見と
二つの源流

1946〜1957
日本の戦後復興と
Hi-Fiへの熱き試み

1958〜1965
幕を開けた
ステレオの時代

1966〜1970
開花する日本の
独創技術

1971〜1980
4チャンネル騒動と
成熟の頂きに立った
コンポーネント

1981〜1990
AV時代の到来と
CDの登場

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