ステレオの産業史|日本ビクター #1
レコード産業と共に歩んだそのルーツは、
アメリカビクターとRCA。
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VICTOR (JVC) 日本ビクター株式会社(現・株式会社JVCケンウッド)
#1 / 1954〜1958 * # 2 / 1966〜1970 * #3 / 1970〜1977 * #4 / 1979〜2009



ビクターのステレオトーキーシステム「フォトフォン」1954(昭和29年)
PHOTOPHONE PG-330

日本ビクター・オーディオのルーツ、
ステレオ・トーキーシステム「フォトフォン」。

 日本ビクターが、 映画のトーキーを事業としたのは1927年(昭和2)に日本ビクターを設立したアメリカビクター ( Victor Talking Machine Company ) が、RCA ( Radio Corporation of America ) に買収された1931年からのことである。
 当初は、トーキーシステムの輸入代行と劇場への設置、それにメンテナンスであった。それが、日本映画のトーキー化によって需要は国内に留まらず、朝鮮半島から満州の広大なエリアに及んだ。しかし、日中戦争が泥沼化すると、RCAはアメリカ人技術者と在日資産を引き上げ、その見返りに手にしたのが、あの犬のトレードマークの使用権であった。その後は、東芝の子会社となり、トーキーの国産化を独自にはかった。
 太平洋戦争の末期には、東洋一を誇った横浜の本社工場が、空襲で壊滅的な被害を受け、戦後の再建は困難を極めた。
 それでも、1953年(昭和28)、日米開戦時の駐米アメリカ大使で、戦後、公職追放の身にあった野村吉三郎が、同郷の松下電器社長・松下幸之助の推挙で日本ビクターの社長に就任すると、途絶えていたRCAの協力を取り付けて日本ビクター再建の道を開いたのである。そして翌年には、東芝に代わり、松下電器が日本ビクターの親会社になった。
フォトフォンのエンブレム



 ワイド映画のために開発されたステレオのトーキーシステム「フォトフォン」は、RCAの技術協力で1954年(昭和29)に実用化された。上の写真がそのスピーカー部の「PG-330」である。この他に劇場の規模に合わせて「PG-350」、「PG-360」が用意され、球のパワーアンプには片チャンネル15〜60Wのものが使われた。そうしたトーキーの再生技術が、ビクター・オーディオのルーツとなった。

 なお、ワイド映画とは、20世紀フォックスが開発したシネマスコープのことで、磁気録音4トラックによるステレオ再生と、疑似ステレオのいずれかを選べる仕様になっていた。その第一作が、1953年(昭和28)年、磁気録音4トラックのステレオで、日本でも公開された20世紀フォックスの「聖衣」(監督/ヘンリー・コスター)である。また、この作品の公開に合わせて開発されたのが、「ボイス・オブ・シアター」の名で知られるアルテック社のシアター・システムであった。

 わが国初のワイド映画は、アメリカに遅れること4年、1957年(昭和32)に、東映が「鳳城の花嫁」(監督/松田定次)を公開。次いで新東宝が社運を賭けた「明治天皇と日露大戦争」(監督/渡辺邦男)を公開すると、邦画の興行記録を塗り替える大ヒットになり、東宝・松竹・大映・日活の各社もワイド映画の製作に乗り出した。しかし、邦画の場合、音はモノラルのままで、アメリカの水準には遠く及ばなかった。それは、大手メジャーの洋画系ロードショー館と違い、邦画の上映館では、 ステレオ化への改装費が、館主の大きな負担になったからである。それでも、日本ビクターの「フォトフォン」は、主要な劇場や映画各社の試写室等に広く導入されて、昭和の映画黄金期の時代を裏方として支えたのである。


ビクター SB-2114A1955(昭和30年)
LA-2 
モノラルコンポーネントシステム 
¥145,000(4点一式セット価格)

正統なコンポーネントのスタイルを
いち早く実現していたビクター。

 わが国で初めてLPレコードが発売されたのは、アメリカに遅れること3年の1951年(昭和26)。 日本コロムビアがLPを開発したCBSから原盤を輸入してプレスした「ベートーヴェンの第九」が最初であった。また日本ビクターは、輸入原盤に頼らず、国産化を成し遂げて2年後に発売した。
 しかし、LPも再生装置も高価であった。人々が街頭テレビに群がっていた時代である。それだけに、「LA-2」とそのシリーズ製品の主な販路は、戦後ブームとなったダンスホ
ールや名曲喫茶で、業務用の需要が中心であった。
なお、LAとは、Longplaying Audiola の略である。
ビクター  RP-36A/AM-2212A/AM-3029A/









■スピーカーシステム「SB-2114A」¥48,000
 30cmウーファーと5cmコーンツイターの2ウェイバスレフ型。クロスオオーバーは4,000Hz。エンクロージャー内にパワーアンプ内蔵のスペースを設けていた。
■プレーヤーシステム「RP-36A」(モノラル) ¥32,000
 口径27cmのターンテーブルは3スピードで、SPとLP、それにRCAが開発したEP(シングル盤)が再生できた。ピックアップの針圧は9g。
■プリアンプ「AM-2212A」(モノラル) ¥27,000
■パワーアンプ「AM-3029A」(モノラル)
¥35,000
 コントロールアンプの出力コードは、カソードフロアーのローインピーダンス仕様で、パワーアンプとの距離を10以上離しても音質の劣化がないように配慮されていた。
 パワーアンプは、当時、注目されていたウイリアムソン回路。これは、イギリスの音響学者ウイリアムソンが、1947年(昭和22)に発表したもので、出力管KT66を3極管接続でプッシュプル動作させ、全段に渡り20dBの負帰還を掛けて、歪率の大幅な低減を可能にしたものである。


ビクター  RP-40
1956(昭和30年)

RP-40
プレーヤーシステム(モノラル)
¥55,000

コントロールアンプを
収納できるプレーヤー。

 常に操作の必要なプレーヤーとコントロールアンプは手許に、というごく当たり前の発想から生まれた正当なプレーヤである。左記写真の前面傾斜部がコントロールアンプをセットするスペースで、フローティングされたターンテーブルは4スピードの口径30cm。再生できるレコードは、SP、LP、EPの他に、毎分16回転の長時間レコードも再生できた。トーンアームは、アメリカのピッカリングを模したもので、カートリッジはマグネチック型。針圧は6〜9グラム。後に、より軽針圧の「RP-46」が5,000円アップの60,000万円で登場した。


ビクター LCB-1B1957(昭和31年)
LCB-1B

バスレフ型 2ウエイコアキシャル
スピーカーシステム ¥89,000(1台)

RCAの名作「LC1A」の
日本ビクター・バージョン。

 RCAの「LC1A」は、1947年にアメリカFM局のモニーターとして登場した。また、同年には、RCAの音響学者H・F・オルソン博士のチームが、この「LC1A」を使い、ボストン交響楽団の生の音と、録音テープによる再生音のすり替え実験をマサチューセッツ州のタングルウッドで行ない実験を見事に成功させた。これが「LC1A」の名声を高めたのである。LCB-1Bのユニット











 日本ビクター・バージョンの「LCB-1B」は、「LC1A」のレプリカモデルで、寸分違わぬ作りになっている。ユニットは、40cmウーファーと5cmツイーターのコアキシャルタイプ。ツイーターには、指向特性を改善するディフューザーが付き、ウーファーには分割振動を抑えるコニカルドームが付く。昭和30年代当時、国内でこれに比肩するシステムは皆無で、今でも伝説として語られている。なお、コニカルドームは、後のビクターの低音ユニットに受け継がれた。
再生周波数帯域:30〜18,000Hz クロスオーバー周波数:1,500Hz 外形寸法:W690×H1,030×D400mm 重量:53kg

ビクター MST-3
1958(昭和33年)
MST-3
 ステレオパワーアンプ 価格不明
日本ビクター初のステレオパワーアンプ。モノラル再生では、ダブルプッシュプルとして動作。
 前年の1957年、アメリアのウェストレックス社が45/45方式のステレオLPレコード(EMIの録音エンジニア、アランブルラインの特許)を世界で初めて実用化。一方ビクターは、東京通信工業(現ソニー)に次いでステレオテープの発売を開始。そのために、既存のモノラルアンプをステレオ化したこの「MST-3」を発売した。ステレオ再生の出力は5W+5W、モノラルでは10Wが得られた。構成は12AT7、6AV6(4本)、6AR5(4本)、6CA4となっている。ビクター PST-14
 最初のステレオプリアンプは、右の「PST-14」(¥22,000)。上記パワーアンプの2年後に登場した。
構成は12AX7(4本)、6AV6(2本)で、利得60dBを得ていた。また、トーンカーブを視覚的に表示する仕掛けが、当時としては、目新しく斬新であった。


ビクター STL-1S
1958(昭和33年)
STL-1S 
ステレオコンポーネントシステム ¥77,000(4点一式)
あのJBLパラゴンが登場した翌年に発売された、
わが国初のステレオレコード再生システム。

 わが国でテープによる録音再生のステレオ化は、東京通信工業(現ソニー)によって実用化されていたが、日本ビクタ
ーは、アメリカと同時期に45/45方式よるステレオレコードの開発を初めていた。これは、RCAからの技術情報の提供があった故であろう。1958年(昭和33)の2月には、ステレオレコードの完成発表会を早稲田大学の大隈講堂で開催し、そして迎えた4月、わが国初のステレオレコード再生システム「STL-1S」の発売となった。
 その広告コピーには、「世界初の立体レコード再生機発売」とあった。システム構成は、スピーカーシステムが20cm
フルレンジのバスレフ型、アンプはプリメインで、NHKの「立体音楽堂」が聴けるAM2バンドチューナーは翌年の発売。ちなみに、前年アメリカで発売されたJBのLパラゴンは1,830ドル。当時の為替レートで658,800円であった。

 開発で最も苦労したのは、ステレオレコードそのものと、ステレオピックアップであったという。パーフェクトピックアップと名づけられた量産品は、国内とアメリカで特許を取得。後のアンサンブル型全盛の時代に受継がれていった。このピックアップは、後にトーンアームの主流になるスタティック型とは異なり、当時のカートリッジのコンプライアンス性能やアームのフィリクション性能の低さに見合ったようにつくられていた。
 そのため、針圧は6〜9グラムの重量級で、針圧がステレオレコードの左右の音溝に均等にかからなければ意味がない。モノラルでは無視できたラテラルバランス、ダイナミックバランス、インサイドフォースの問題を、スプリングの力で打ち消したのである。それだけに、お気に入りのレコードを繰り返し再生しようものなら、たちまちにして、楽音がスクラッチノイズに埋もれてしまう、という弱点があった。

 なお、日本ビクターが最初にリリースしたステレオLPは、エミール・ギレリスのピアノ、フリッツ・ライナー指揮のシカゴ響「チャイコフスキーピアノ協奏曲第1番」の他、当時流行のラテンマンボの王様ペレス・プラードの「ブルー・イン・ウルトラ・Hi-Fi」など。価格は、30cmLPのクラシックが2,800円、ポピュラー2,500円、17cmLP900円。また、日本コロムビアからも、初のステレオLPとして、レスピーギの「ローマの松」などがリリースされた。
ビクター STL-3とトレードマーク
 上記のステレオ1号機が発売された翌年「皇太子(今上天皇)と美智子妃ご成婚記念」と銘打って発売した業界初のアンサンブル・ステレオ「STL-3」(¥47,800) がステレオブームに火をつけて大ヒット。以来、アンサンブル型を主流に 「ステレオはビクター」 のキャッチフレーズで業界トップのシェア(50%)を長らく堅持して一時代を築きあげた。

#1 / 1954〜1958 * # 2 / 1966〜1970 * #3 / 1970〜1977 * #4 / 1979〜2009

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INDEX

1881〜1945
立体音の発見と
二つの源流

1946〜1957
日本の戦後復興と
Hi-Fiへの熱き試み

1958〜1965
幕を開けた
ステレオの時代

1966〜1970
開花する日本の
独創技術

1971〜1980
4チャンネル騒動と
成熟の頂きに立った
コンポーネント

1981〜1990
AV時代の到来と
CDの登場
INDEX

*国内ブランド
ACCUPHASE
AUDIO TECHNICACORAL
DENON
DIATONE
EROICA & UESUGI
FOSTEX
GRACE
LIVING AUDIO
Lo-D
LUXONKYO
PIONEER & EXCLUSIVESANSUI
SONYSTAXTECHNICS
TRIO & KENWOOD
VICTOR (JVC)YAMAHA

アンサンブルステレオと
セパレートステレオ


*海外ブランド 
ALTECAR
GOODMANSJBL
JORDAN WATTSMARANTZ
MclNTOSH
ORTOFON
SMETANNOY







 

















 

 

 

























































































 

 

 































































































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*国内ブランド|ACCUPHASEAUDIO TECHNICACORALDENON
DIATONEEROICA & UESUGIFOSTEXGRACELIVING AUDIOLO-D
LUXONKYOPIONEER & EXCLUSIVESANSUISONYSTAXTECHNICSTRIO & KENWOOD
VICTOR (JVC)YAMAHA
 |アンサンブルステレオとセパレートステレオ
*海外ブランド|ALTECARGOODMANSJBLJORDAN WATTSMARANTZMclNTOSH
ORTOFONSMETANNOY


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